ONE PEACE (〜45巻まで)


ぜんぜん興味ないよ、という構えだったけれど、
「社会勉強」とおもって、えいやとページを開いた。

そして45巻まで一気に読了。

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笑って、泣いて、ワクワクして、感動した。

旅立ちの時点ではひとりだった少年ルフィが、
ひとり、またひとりと仲間を獲得しながら
海賊の跋扈する大航海時代で「海賊王」にならんと冒険をつづける。

ルフィの成長は、仲間の数によって可視化され、
「海賊王」への道のりは、より強い敵を倒すことでカウントダウンされ、
ルフィに賭けられる賞金額という具体的な数値に換算される。

ルフィの変化の軌跡がいかにもわかりやすく現わされているわけだけれど
一方でルフィの精神的な部分、その内面については巧妙に隠されていて、
どのような障壁がおきても、ルフィには葛藤はなく、だから成長もない。
この部分でぼくは、作者の尾田栄一郎を
「ジャンプ」の偉大な先人、鳥山明の正当な後継者だと感じていて、
悟空やアラレが、表面上の過剰な特徴に彩られながらも
その実なにを考えているのかはさっぱりわからなかったように、
ルフィの内面は隠され続けることによって、
不可侵な神聖さを与えられている。
そしてこのことが、『ワンピース』の感動を支える重要な根拠なのだ。

「ルフィを信じろ!」と仲間のひとりがいう。
「信じる!!」と仲間のひとりが答える。
そして読者は感動する。

感動するのはルフィの内面が hollow だからこそ、だ。
仲間への異常な執着と天衣無縫な善性だけが、ルフィに与えられた記号的な属性であり、
それ以上のディテールがないから、ほころびもない。
ほころびのない、完全な何かへの、絶対的な信頼。
それはつまり、信仰だ。
物語のなかで「仲間」というフレーズが登場するたびに
それは敬けんな信仰告白にも見え、
血を流す彼らの戦いは「受難」となって、ぼくを宗教的な感動スパイラルに導く。



ルフィたちの冒険はまだまだ続いているようだけど、
読者としてぼくが同伴させてもらうのは、ここまでになると思う。

最初に書いたように十分楽しみ満足しつつも、
45巻という区切りはよい潮時という気がするのだ。

「エニエス・ロビー」編での戦闘ではじめて登場した、「ギア」。
いわば変身して強くなる系の理屈なのだけど
どんどん現れる強い敵に対抗する術として、とうとう登場してしまった飛び道具という感があり、
また同じ頃に描かれた仲間割れのエピソードで
ルフィの「悩み」が垣間見えそうになったあたりで、根本的な部分での綻びを感じてしまった。
ルフィが精神的な葛藤をすることは、物語の強度を逆に弱めてしまうのだ。

と、さいごに不満めいたことを書いたけれど、
こういう超長期連載のマンガに、
マクロな視線で物語の整合性や構造的な不謬性を求めるのはもちろん野暮で、
毎週毎週、「ジャンプ」の発売をうずうずして待ち
買って開いて楽しんで、心ときめかせながら次の一週間を待つ、
その待っている時間こそ至高のとき! なのだ。

ぼくのようにアレしたZIPデータをiPadで集中的に読んでの感想なんて
『ワンピース』の本質とはかけ離れたところにあるのだろうと思う。

読めてよかった。
と、しみじみ思いつつ、
ルフィたちの冒険を遠くから応援したい。