桐島、部活やめるってよ


この映画のことを @POPMASTER と話していたとき、「どのキャラクターに感情移入した?」という話になって、ふたりとも

神木隆之介の友だちで、
前野朋哉が演じた「おっまたー」の男の子にじぶんを重ねたということで意見の一致をみた。
「昨日、『スクリーム3』を最後まで見ちゃった」なんてセリフ、他人が口にしたとは思えないわけで。


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感心したのは小道具の使い方の妙だった。「進路希望の用紙」がすごく効いている。


桐島の不在によって物語が発動するのだけど、
同時に水面下でキャラクターたちを牽引していたのは、
映画の冒頭でクラスに配布された、進路希望の用紙。
「将来、なにをやりたいのか?」を書き込む一枚の紙だ。

「桐島」の物語は、
桐島がいなくなり、
かわりに現れた進路希望の用紙によって突きつけられたシンプルな問いに、
それぞれのキャラクターたちが答えようとする話だ。

水曜に進路希望の用紙が渡されて、
その提出日の前日の火曜に、映画は終わる。(裏がとれてないのであとで調べます)



「将来、なにをやりたいのか?」は、単に進路の選択を超えて、
「じぶんは何者になりたいのか?」という問いかけにスライドする。
映画のなかで、中盤にもう一度「進路希望の用紙」が登場するとき、
白紙であることがわかるのだけど、真摯に答えようとするなら、
だれもが口ごもってしまう設問なのだ。
「桐島」が描く学校という閉じられた舞台では、
アイデンティティーの成立要素は性愛か部活の二つしかないみたいに描かれている。
そして、そのふたつの獲得を巡ってみんなが、もがいているみたいに見える。
でも、自分が何者かを定めるのは、この二つしかないわけではないはずだ
(とキャラクターたちは気づきはじめる)。
ずっと暗転によって場面の切り替えをしてきた映画は、
最後の最後だけホワイトアウトで幕を閉じる。
それは、もと野球部だった東出昌大が、いまのじぶんは「白紙」であるという苦い状況を、
そのときはじめて肯定できたことの象徴みたいだ
——といま書きながら、それは強引だろうと感じつつ。

でも「桐島」の魅力って、いくらでもこの手の深読みを許してくれるところが大きいとおもう。



「触ってもいい?」
というセリフがべつの場面、
べつのキャラクターの口で繰り返されていたのも印象的だった。

このセリフは、最初はバドミントン部の部室で
清水くるみが橋本愛の腕に対して。
2回目は、屋上の場面、東出が神木の持つカメラに対して発せられていた。
どちらのセリフも、まるで神聖なものに触れるみたいに、
おずおずと、謙虚な申し出としてぼくには聞こえた。
じぶんが持っていないアイデンティティーの根拠に
羨望とともに触れる行為だったから。


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「桐島」は公開からだいぶ経っていた頃に、
早稲田松竹で駆け込みで観た。
同時上映が『サニー』で、いまとなっては見逃してしまってくやしいのだけど、
その頃は本当に毎日ドタバタしていて、2本立てで映画を観るなんて夢の夢だったから
仕事と仕事の隙間時間に、「桐島」だけ観てきた。

今年はもっと映画を観れるだろうか。
ぼくのアイデンティティーを決めるのは、仕事だけじゃないはずだ、と窓の外を眺めつつ。




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