『アーキテクチャの生態系』


ウェブに振り回されている気がしたので



この本は、
「ネットの進化って、生態系の進化みたいだ」というアイデアを中核にしている。

そのメッセージを簡単にいうと、

「いまはGoogleのページランクが高いページがえらいっていう理屈がメジャーだけど、
べつの理屈で設計され、進化したネットのサービスはたくさんあるよ、
たとえば日本にも。
そういうのって、一歩ひいて観察してると楽しいね」という感じ。

まず、ネットは共有のメディアであること。それが大前提だ。

もともとインターネットというのは、「自律・分散」型のシステムといわれるように、基本的にはばらばらの場所にコンピュータが設置され、それぞれ別の管理者がそのサーバを管理し、その間を相互にネットワークで結んでいく、という仕組になっています。そこでバーナーズ=リーは、各研究者が自分の管理しているサーバ上に自分の文書を設置しておいて、ほかの研究者が必要なときに読みに行く(取りに行く)、という仕組みにしておけばいいだろうと考えました。これがウェブの基本的な発想です。(p.34)


その共有の仕方として、多様な方法が編み出されてきた。
ぼくがいまアカウントを持っている主なものだけでも
このLivedoorBlog、はてな、ニコニコ動画、mixi、Twitter、Facebook、Google+、blogger、Tumblr、foursquareに、まだあるかもしれない。
たくさんあって、少しずつ違って、もうよくわからない。

著者の濱野さんは、これら多くのサービスを、同期か、非同期かで分けていく。

ちょこちょこ端折りながら引くと

ウェブにしても電子メールにしても、インターネットというのは、大元の技術が非同期の側に分類される特性を持っていました。……
「TCP/IP」や「パケット通信」などと呼ばれる、インターネットの通信の仕組というのは、A地点からB地点まで、いったんパケットという小包に細かく区分けして、そのとき空いている径路を使って、ばらばらに情報を送るという方式です。……
つまりその通信方式のレベルで、非同期的なズレが必然的に生じるようになっていて、どちらかといえば「テレビ」や「ラジオ」といった同期メディアよりも、「手紙」や「雑誌」といった非同期メディアを再現するほうが向いていたのです。……
もちろんインターネット上のアプリケーションのなかには、昔から同期的なものが存在していました。チャットというのは、いうまでもなく、両者の間でリアルタイムにコミュニケーションが交わされるため、常に両者はPCの前に貼りついてキーボードを叩いている状態にあります。また、オンラインゲームや「Skype」も同期的なメディアに分類できます……
しかし、インターネットの同期型通信は、非同期型通信に比べるとサーバの負荷などのコストがかかりますし、そもそも、数十人のレベルを超えて同時に大勢のユーザーと会話すること自体が現実問題とて不可能ですから、それほど大規模なものは多くは存在していなかったのです。
p.200



この前提でみていくと、
Twitterやニコニコ動画には、本来非同期なはずのものを、疑似的に同期しているようにみせるアーキテクチャ上の仕掛けがほどこされている。
つながっている、みたいな感覚。
そのことで、「祭り」の演出が可能になる、と。


主要なウェブサービスについてだけ整理すると

 Blog……非同期……ページランクへの親和性
 2ちゃんねる……非同期……盛り上がった板をリセットするアーキテクチャ
 Twitter……選択同期……パーソナルなものからパブリックな「祭り」に
 ニコニコ動画……疑似同期……ストックされることで「祭り」化
 Facebook……選択同期……「祭り」は可視化されないけど、バイラル化しやすい

このなかで、どれが正しい、間違っているというのはないのだけど、
濱野さんとしては、日本発のウェブサービスって、良く考えられているよね、という気持ちは強いみたい。
それと、セカンドライフについては

 セカンドライフ……真性同期……過疎の可視化、「祭り」にほど遠い


どうして盛り上がらないかが、この同期の性質によると明快に示していて面白かった。

個人的にまとめると、
同期って、便利だけど反面、うっとおしい。
非同期はコミュニケーションには不向き。でもストック情報に向いている。
だから、いいとこどりしたい。

ということで、(めざわりでないけど同期性のある)Twitterと(非同期だけどストック情報を編集できる)Blogを連携すればいいんだな、
というのが当座の気持ち。
けっこう気持ちの整理がついて、スッキリした。

本の内容とは関係ないけど、
根本的な部分で、じぶんで編集したいという気持ちがあるので、
FacebookとGoogle+にいまいち乗れなくて、更新しないくせにBlogが手放せないんだな、とおもった。


アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたかアーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか
濱野 智史

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