噂に違わない、とんでもなさ!
今年読んだなかで、もっともイカシテテ、イカレテル大作。



22世紀の巨大都市で起きた、グロテスクな連続殺人事件の中心に、謎の怪物がいた。
その正体を追って、都市をさまよい
ついには物理世界を超えていく主人公たち。

物語をぐいぐいと引っぱっていくのは
設定の巧妙さとかストーリーテリングの巧さではなく
いかがしいまでに淫らでパワフルでスタイリッシュな文体の力そのもので
活字のなかにタイポグラフィーが踊り、果ては楽譜が、抽象的なイラストがページ全面を覆ったりもする。

正体不明の怪物の「怪物性」を伝えるために、
この本自体が、異様な存在へなろうとしているみたいだ。
そしてそのために、文体が、図版もふくめたあらゆる冒険的な使い方でページのなかを飛び跳ねている。

それでも、印象としてはジャンクなのに、構成に破綻はない。
解説で山形浩生が書いているけれど、
「まともに編集された、ウイリアム・バロウズ」
というのはピッタリだとおもう。
小説が、その散文の可能性を最大に引き出しているという意味で、
これこそ「高橋源一郎、絶賛」と銘打たれるべき作品(じっさいに絶賛しているかは、知らない)。