観ながら、しだいに義憤がつのってくるのが感じられた。
映画に対してではない。
『M:i:III』を観て、
「うん。まあまあかなー。ストーリーはダメダメだけど。まあ、俺はデパルマの1が一番すきだけどね」
などと言っている輩に対する怒りだ。
べつにそういう声をじっさいに聞いたわけじゃなくて
でも
「きっとどこかで誰かがそう言っているに違いないっっ」
と、ぼくがかってに妄想して
その仮想のだれかに対して怒りを爆発させているという具合で
もちろん筋違いな怒りなんだけど、
『M:i:III』って、映画としての出来がどうあれ、
いかにもそういうシニカルな言説を誘う存在だから、
たぶんこの映画を見た人の20%がそんなことを言ってる気がする。
宿命的にバカにされる映画っていうか。
にもかかわらず、J・J・エイブラムスのがんばりようときたら……。
たいへんなプレッシャー、
ほとんどピンチヒッター的な起用だったにもかかわらず、エイブラムスはいい。
実際、テンション上げすぎで血管はちきれそうなその演出ぶりは涙ぐましいばかりで、
ぼくは中盤の橋の上で戦闘機による爆撃を受けるシーンまで
こころのなかでエイブラムスに拍手を送りながらスクリーンを見つめていた。
すごい才能だとおもう。
まずそれを認めないわけにはいかない。
認めた。
で、はなしを進める。
「オリジナルの『スパイ大作戦』にあった、チーム戦の魅力を復活させる」
と謳って始まった企画のはずなのに、
終盤に向けて、
ハントがひとり暴走していく展開は失敗だとおもう。
「勇敢なのは結構だが、度を過ぎるとただのアホだぜ」
という劇中のセリフのとおり、
ハントがひとりで突っ走るにつれて、どんどんアホな映画になってくる。
さいごのアクションシークエンス、看護婦がいきなり銃の手練れに豹変するのは
ギャグというより、ハントにひとりで突っ走らせたあげくの脚本の破綻を表すものだろう。
アメリカ映画の伝統ということなのか、
ヒーローと悪漢が
サシで殴り合いをして勝敗を決める、というのを
この2006年制作のスパイ映画でくり返さなくてもよかろうに。
前半の巧緻に設計されたアクションに比べて
オトコがふたり殴り合ってるだけの場面、どうしたって見劣りする。
最後こそ、チーム戦で決めてほしかった。
と、文句もいいながら
来週から、エイブラムス演出のドラマ『LOST』のDVDレンタルしてこなくちゃとこころに誓う夏。
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